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「教諭のわいせつでPTSD」 食い違う主張 専門家「第三者調査機関設置を」

通学先の公立小の30代男性教諭にわいせつ行為を受けたとして中1の少女(12)と両親が千葉県と自治体、男性教諭を相手取って提訴した損害賠償訴訟の第1回口頭弁論が17日、千葉地裁(高取真理子裁判長)であった。学校や自治体側はわいせつ行為があったことを否定しており、この日も請求棄却を求めて争う構えを示した。県内では過去にも教諭から性的被害を受けたとして裁判に至ったケースがあり、専門家は公的な第三者調査機関設置の必要性を訴えている。【加藤昌平】
 「私たちが願うことは、教諭本人、校長、自治体教育長、県知事による心からの謝罪です。それなくして私たち夫婦の宝物である娘の復帰はありえません」。法廷で、少女の父親(56)は声を震わせながら訴えた。裁判後の報告集会で、母親(48)は「娘は中学にも行けない状態が続いている」と涙を流した。
 訴状などによると、少女は小5だった昨年2月から約1カ月間、女子トイレなどで男性教諭から胸を触られるなどのわいせつ行為を繰り返し受け心的外傷後ストレス障害(PTSD)を患い通学できなくなったという。
 「学校側の対応がうちと同じだ」。小6の時に担任の男性教諭から性的暴行を受けたとして県や浦安市に損害賠償を求めて2006年に千葉地裁に提訴した女性(27)の母親(57)は少女の事例を知り、そう思ったという。東京高裁は10年に女性の訴えを認め、県と同市に330万円の支払いを命じ、判決は確定した。事件発生から判決を勝ち取るまで7年を要した。
 母親は、刑事、民事裁判を通じて、「学校の消極的な体質」が印象に残ったという。女性から被害を打ち明けられ、学校や浦安市教育委員会に相談した。学校は「全職員に調査したが、事実は確認できなかった」と回答してきた。しかし、実際にはもう一人の担任教諭と数人の補助教員にだけしか聞き取りしていなかったことが裁判で判明したという。
 男性教諭は強制わいせつ罪で起訴されたものの刑事裁判では無罪となった。この判決を根拠に学校と市教委からはいまだに謝罪の言葉はない。
 一方、女性は当時、PTSDと診断され、今もわいせつやセクハラのニュースがテレビで流れると体調を崩す。母親は「民事で勝てたことは私たち家族が立ち直る大きなきっかけとなった。でも当時のことは一日も忘れることはない」と憤る。
 今回提訴した少女と浦安市の女性の事例に共通するのは、親から被害について知らされた学校や教育委員会の調査に対する消極的な姿勢だ。
 少女の父親は17日の報告集会で「学校や教育委員会のずさんな対応に怒りがわいた」と批判した。浦安市の母親も「学校も行政も自分たちの立場を守ろうとするから、私たちに相談する場がなかった」と振り返る。
 「学校の責任を追及されないよう教育委員会が教職員にかん口令を敷いて情報が漏れないようにすることもある」。学校現場の事件や事故に詳しい早稲田大の喜多明人教授(教育法学)はそう話す。
 そもそも慢性的に人手が不足していたり、教員が過重労働となっていたりして、子供が被害に遭ってもそのケアがないがしろにされることが多いという。
 文部科学省は16年、各都道府県教委に対する指針で、学校現場で起きた事件や事故について、速やかに調査するとともに、必要な場合は第三者調査委員会を設けることを通知した。だが第三者機関の設置は埼玉県や東京都世田谷区などまだ一部で、喜多教授は「行政機関だけでなく民間でも子供の置かれている状況を調査し、課題を明らかにすることで第三者機関設置を促していかなければならない」と指摘している。

4月16日 毎日新聞

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