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「働く親は無理」「やって良かった」PTAに賛否 強制から自由参加へ改革する学校も

もうすぐ4月。子どもの進級で喜ばしいこの季節に、親を悩ませるのがPTA役員、委員の選出ではないでしょうか。じゃんけんやくじ引きで仕方なく引き受ける人がいる一方、役員活動をしたことで「親同士のつながりができた」と前向きに捉える人もいます。共働き家庭が多い今の時代に合った組織へと、脱皮を図った学校もありました。

読者の声 ノルマ疑問/働く親は無理/手法見直し
 会社員男性(48)=鹿児島市 副会長を2年間したが、平日昼の会合には仕事でなかなか出席できず、申し訳なさで肩身が狭かった。役員のお母さんから「懇親会の万歳三唱さえしてくれればいいから」と言われたときは、期待されていないのかなあと寂しかった。普段は会員制交流サイト(SNS)で情報交換していたが、顔を合わせないとコミュニケーションを取るのは難しいと実感した。

 パート女性(42)=福岡市南区 小学校に「子ども1人につき1度は役員か委員を」というノルマがあり、2人分を早々に果たした。もうやらない。登下校の見守りや夏休みのプール監視は意味があるが、ベルマークをはさみできれいに切るために学校に集まったりする係は「各家庭で切ってもらえば済むじゃない」と思う。必要ない活動をわざわざ作って、そのポストを埋めるためにノルマを課すのはおかしい。

 パート女性(40)=福岡市城南区 委員を1回したが、主な仕事は授業参観後に各クラスである保護者懇談会の司会。でも結局、先生が進めているので「要らないなあ」と感じた。学校行事で会社に休みを申請できるのはせいぜい月に1回。働いている母親が多いのに、昔ながらの運営は無理がある。昨年から執行部を中心に、会合を減らすなどの負担軽減策を考え始めたようだ。

 自営業男性(39)=福岡市西区 副会長を務め3年間で改革をした。(1)なり手のいない委員はくじ引きしてまで決めない(2)祭りなどイベントごとに1日ボランティアを募集(3)動員しないと集まらない講演会などは開かない-と決めた。保護者アンケートで、従来のやり方だと誰も得していないことが分かったからだ。新年度は総会にPTA規約の改正を諮り、退会可能にする。入会したくなる魅力的な活動をしたい。

 会社員男性(59)=広島県福山市 子どもたちが卒業するまで十数年間、執行部役員をした。最初のうちは荒れていた学校をPTA一丸となって立て直し、達成感もあったが、やる気のある校長が異動し、モンスターペアレントのような親が執行部に入ってきたのもあって次第にまとまりがなくなり、最後は悲惨だった。人間関係に疲れた。
異業種交流/割り切って/先生忙しい
 自営業女性(46)=大分市 小中学生の子どもが3人いるから、毎年何か委員が回ってくる。下校時に不審者対策でパトロールをしたり、子どもが寝た後にベルマークを集計したり、結構大変。くじ引きで委員になっても拒む人がいて、正直負担に思うことも。でも、竹馬や竹とんぼ作りを教える行事などで地域の方々と交流すると「こんなことをしてくれるんだ」と勉強になる。終わってみると、いつも「まあ、やって良かったかな」と思う。
 農業男性(48)=熊本県菊池市 子どもが4人いて、10年近く執行部役員を続け、週に1回くらい学校に行っている。やって良かったのは、先生と親しくなれたこと。子どもが友達ともめたとき、すぐ先生に相談できた。共働き家庭が多く、会合は午後7時からなので出席しやすい。そこで異業種交流もできる。昼間の講演会などでも8割近くの役員が仕事の都合をつけて出席してくれるので、動員をかける必要がない。父母どちらかがこの地域出身、という家庭が半分くらいを占め「母校だから協力しよう」という意識の人が多いのかもしれない。

 主婦(53)=福岡県大牟田市 娘の高校で各クラスから選出する役員を2年間した。役員会は2年間同じメンバーで全くもめ事がなかった。「できる人ができることを」「参加できない人には理由がある」と割り切っていたからだと思う。PTAをうまく運営するこつは、互いの家庭環境を理解して尊重すること。役員をしていると先生との距離が近くなり、大学受験のアドバイスをもらえたりしてありがたかった。

 教員女性(49)=福岡県大野城市 「役員をやるだけ損」という風潮が広がらないか心配している。子どもはさまざまな人と関わり、支えられて成長する。その意識があれば、こうした問題は出てこないのでは。仕事との両立は大変かもしれないが、教員も夜遅くまで働いており、PTAの助けがないと学校運営ができない。子どもが学校に通うのはしばらくの間なので、保護者に大いに関わってもらい、子どもが成長する喜びを分かち合いたい。
強制から自由参加へ改革 福岡・志免中央小
 福岡県志免町の志免中央小のPTAは2016年度に1年がかりで、それまでの事実上の強制参加型から、年単位や1日単位で保護者がボランティアとして自由参加する方式へと改革した。

 「親が不満を抱きながら運営するPTAが本当に子どものためになるのか、と感じた」。当時会長を務めていた村上哲也さん(46)は改革のきっかけを振り返る。児童数929人の同小。それまでのPTAは執行部から各委員会まで総勢183人を毎年選出。規約にない「在校中に1回は委員をする」「年に1度、行事に参加できなければペナルティーで翌年の委員になる」などの暗黙のルールがあった。4月の委員決めでは、くじやじゃんけんで保護者が泣いたり過呼吸になったりする光景も見られた。

 改革前に実施した会員アンケートでは、600件を超える回答者の9割近くが母親で、その7割ほどが働いていた。委員経験者の8割近くが「時間のやりくりが大変だった」と答えたことなども踏まえ、行事やイベント数を32から15まで見直した。規約も一から作り直し、運営委員会や執行部を廃止、全てボランティア制の自由参加とした。

 さらに18年度からは問い合わせ対応やホームページ更新などのために事務員を週2日間雇用し、会員の事務作業の負担軽減を図った。千部の作成が必要だった総会資料も電子化した。

 現会長の南里門子(ゆきこ)さん(46)は「以前に比べ、ボランティアの保護者は生き生きしているし、自発的な企画も生まれている。PTAを存続させるためにも必要な改革だった」と話している。



「できる人」から「やりたい人」に
PTA問題に詳しい文化学園大学教授 加藤薫さん(57)

 PTAのトラブルで妻が学校へ行きづらくなり、長女の中学の役員を務めた15年前から、PTAの研究に取り組んでいる。

 PTAは「Parent-Teacher Association」の略。戦後、日本の民主化を進めるため、連合国軍総司令部(GHQ)が当時の文部省に指示し、全国で急速に設置が進んだ。学校設備の充実や給食制度の定着、地域の環境改善などに貢献してきた歴史がある。

 任意団体のため入退会は自由だ。しかし、入学と同時に自動加入の形を取る学校が多く、非加入家庭の子に対する差別などトラブルも起きている。2014年に熊本で起こされた裁判などをきっかけに、近年は入会の意思を保護者に確認する学校も増えてきた。

 共働きや介護など家庭を取り巻く環境が大きく変わる中、PTAの活動規模は変わらず、負担に感じる人が増えている。役員を押しつけられるのが嫌で保護者会を欠席する人もいて、これでは学校、保護者双方にデメリットしかない。

 制度が時代とずれている今、PTAの在り方は見つめ直す必要がある。保護者と先生が意見交換する懇談会は学校側が定期的に開き、イベントの際はボランティアを募るなど「できる人」ではなく「やりたい人」がやる活動にしていく方法もあるのではないか。
2019年3月31日 西日本新聞社

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